両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

平成26年9月18日、週刊朝日2

別れても男親も子育てしたい 民法改正しても変わらぬ裁判所

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 危機を迎えながらも、子はかすがいと何とか続いていた結婚生活がある日、突然、終わりを告げる。妻が予告もなく子どもを連れて家からいなくなり、茫然自失の状態で取り残される夫が最近、増えている。面会交流調停(別居する親が子どもとの面会を求めて裁判所立ち会いの下、話し合い合意を目ざすこと)を起こし、わが子と会おうとしても、さらに法の壁が立ちはだかるという。

 悲劇の一因は日本の法制度にある。日本では離婚後、親権は片方の親だけが持つ単独親権制という旧態依然とした制度が今も採用されている。そのため、「離婚=親子の別れ」という処理がなされがちだ。

 一方、世界に視野を広げると、離婚後も共同親権制を採用している国が圧倒的に多い。南米や北米・ヨーロッパ・オセアニアのほぼすべて、中国と韓国がその制度を採用している。これらの国では、「別れても2人で育てていこう」というコンセンサスや、面会交流は「年間100日以上」という国際基準がたいてい確立されている。離婚後の処理については子どもの不利益にならないよう迅速に行われる一方、養育については細かく取り決めることになっている。なおここでいう年間100日以上という基準は、離婚家族を対象とした実証研究(米・80年)により「離婚後も別居親が定期的に子どもと会うことが精神的健康に決定的に大事」という科学的に立証された根拠に基づいた数字なのだという。

「別れたら元伴侶に頼れず一人親で育てなくてはならない」傾向にある日本と比べると、育てる側の親にとってどちらが楽かは一目瞭然ではないか。

 世界基準から外れている基準を是正するべく、政府は重い腰をようやくあげ、子どもと離婚に関して記した民法の第766条が改正され、12年4月に施行した。それに伴い、離婚届には「面会交流」と「養育費の分担」についての項目が新設され、今年に入ると国境を越えての連れ去りを禁止するハーグ条約に日本が加盟したり、親子断絶防止議員連盟が結成されたりもした。

 この問題について取り組んでいる泉健太衆議院議員(民主党)はこう言う。

「94年に批准した子どもの権利条約にも両親との交流規定が明記されていましたが実態が伴っていませんでした。一昨年の民法改正でようやく面会交流と養育費の分担が明記されたことは大きな前進です」

 では民法改正後、面会はできるようになったのだろうか。改正後の変化について離婚問題に詳しい能登豊和弁護士は次のように批判する。

「DVやつきまといの恐れがあっても面会交流は可能です。公的施設で第三者立ち会いの下、行えばいいわけですから。それなのに国は改正後も、長期的・継続的な面会交流の実施に全く関与しようとしません」

 支援団体の評価はさらに厳しい。子どもに会えない親たちのサポートを行ったり、親子交流を促進する法律制定実現に力を入れている親子ネット(会員数約500人)の鈴木裕子前代表は、法律を運用する側の変わらなさを指摘する。

「改正後、最高裁から各家庭裁判所に通達が3回出されたんですが、家裁はそれに沿った運用を始めませんでした。どんなに近隣に住み、同居時の親子関係が良好で、両方の親が家事育児を分担できていたとしても、月1回数時間というそれまでどおりの相場に落とし込もうとするんです」

 親子ネットが民法改正前後(11年秋~14年春)に実施したアンケートの結果(回答を寄せたのは同会会員の108人)はこの指摘を裏付ける。

「民法改正後も裁判所の運用は変わっていない」「面会交流の実現に努めていない」と感じる人は80%以上。改正後も月1回以下の面会しかできない人は84%、まったく面会できない人が35%となっている。また裁判官・調査官・調停委員・弁護士の評価は低く、「適切でない」とする評価がそれぞれ85%以上と散々な結果が出た。

(ライター・西牟田靖)

※週刊朝日  2014年9月26日号より抜粋

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