平成29年8月20日、北海道新聞
離婚と面会交流 子どもの幸せ最優先に
離婚や別居で離ればなれになった親と子が定期的に会う「面会交流」を巡り、父母がもめるケースが後を絶たない。
全国の家裁に昨年申し立てられた調停や審判は約1万4千件にのぼり、10年前の2倍を超す。
少子化に加えて、親権を失っても育児に参加したい父親の増加などが背景にあるという。
面会の時間や回数、方法をどうするか。本来は父母がじっくり話し合うべきだが、当事者だけでは解決が難しいこともあろう。
ならば、行政や民間団体をはじめ、社会全体で円滑な面会を支える。子の幸せを最優先に、そうした取り組みを充実させたい。
欧米では、離婚後も父母双方が養育する共同親権制度の国が少なくないが、日本は父母いずれかの単独親権しか認めていない。
このため、「子に会いたい」「会わせたくない」という問題が起こりがちだ。
トラブルの増加を受けて2011年に改正された民法は、面会交流や養育費の分担について、子の利益を最も考慮して決めると明文化している。
親は、この法の趣旨を忘れてはならない。子の成長にとって、離婚後も父母双方とつながりを持ち続け、愛情を実感できることは大切なことだ。
とはいえ、核家族が当たり前のいま、父母が配偶者以外に相談したり、協力をあおいだりするのは容易なことではあるまい。
離婚時に感情的になっていたり、そもそも連絡が途絶えたりしていれば、解決はさらに遠のく。
そこで期待されるのが、行政や民間団体といった第三者によるサポートである。
先進的な例が、兵庫県明石市の取り組みだ。相談対応にとどまらず、面会の場所を提供したり、父母が顔を合わせなくても済むよう、子の引き合わせを仲立ちしたりしている。
子どもを社会全体で育もうとする施策として、うなずける。
一方、離婚や別居の原因が家庭内暴力や児童虐待などにある場合は、細心の注意が必要だ。家裁の許可を得た面会交流であっても、子を殺害し、親も自殺するような事件が起きている。
子が面会を嫌がったり、危害を加えられる恐れがあるときは無論、会わせるべきではない。
痛ましい事件を繰り返さないため、関係機関は可能な限り、面会の可否を慎重に見極める。そうした対応が不可欠だ。
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