両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

平成29年9月21日、朝日新聞

(私の視点)離婚後の子育て 共同親権で親子の関係守れ 大森貴弘

 離婚後の父母が共同で子を育てる共同親権制度が世界中に広がっている。離婚した父母が笑顔で子を受け渡し、子はふだん別居している親と交流する。週末や夏休みには別居親のもとで宿泊し楽しく過ごす。そんな光景が世界の国々では当たり前に見られる。
 一方、我が国は子の健全な発達には両親が必要との認識が薄く、先進国で共同親権を認めない唯一の国である。毎年約23万組が離婚し、その6割に未成年の子がいるが、離婚後は単独親権となるため、親権争いが激化しやすい。親権を失った親は、子との面会交流を拒否されるなどで、6割以上が子に会えなくなる。毎年約15万人の子が別居親との絆を断たれている。
 こうした親子の「断絶」を防ぐための法律(親子断絶防止法)を超党派の議員連盟が準備している。親子の面会交流を促進しつつ、国や自治体に親子関係の維持を促す理念法である。将来の共同親権導入を検討する旨の付則もある。
 他方、面会交流での「リスク」を理由に法案に反対する人々もいる。リスク事例として挙げるのが、今年4月に兵庫県伊丹市で起きた父子の死亡事件だ。父親は別居している長女との面会交流中に、無理心中を図ったとみられる。事件当日まで約3カ月間、面会はなく、父と娘は引き離しの状態にあった。父親は、娘と会えぬ悲しみから精神科に通院していたという。
 原因は親子断絶による父親の精神状態の悪化にある。面会交流が継続されていれば事件は起きなかったはずで、親子断絶の問題を告発した事件と言える。
 外国の例では、ドイツでは子を育成する親の権利が憲法で明文化されており、連邦憲法裁判所は、単独親権を定めた民法の規定を「憲法違反」とし、共同親権が法制化された。米国でも親の権利が憲法により導き出され、すべての州で共同親権が導入されている。
 日本は憲法に親の権利の明文規定はないが、人権の普遍性や親子の自然的関係を論じた最高裁判決などが根拠になる。親子断絶防止法は、子の利益に資するとともに、基本的人権である親の権利の具体化としても意義を持つ。かけがえのない親子の絆を守り、子の健全な発達を期するためにも早期の制定が必要だ。
 (おおもりたかひろ 常葉大学講師〈憲法学〉)

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