両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

令和2年5月3日、東京新聞

<新型コロナ>別居中の親が子どもに会えない 家裁の審理止まり、面会交流できず

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 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で家裁の審理が止まるなどして、別居中の親が子どもに会えないケースが相次いでいる。面会交流や離婚などを巡って家裁で審理中の人に、市民団体が行ったアンケートでは、期日を取り消されたりして審理の見通しが立たない人が約七割に上った。専門家は「感染リスクに配慮する必要はあるにしても、司法は親子が断絶しないよう工夫すべきだ」と指摘している。(佐藤直子)

◆離婚調停の期日取り消し、娘の安否分からず
 東京都内の男性が半年ぶりのわが子との面会で、読み聞かせようと用意した絵本。出番はまだない

 「娘が元気なのか、どうしているのか。コロナ禍だというのに、安否や様子が分からない」。千葉県に住む四十代の男性会社員は不安をこぼした。昨年秋に始まった別居中の妻との離婚調停は四月に予定されていた期日を取り消され、次回は決まっていない。
 婚姻中は原則父母がともに親権者となるが、日本では離婚後、父母の一方しか親権者になれない「単独親権」のため、別居する親と子どもとの面会交流の取り決めは離婚時に父母の間で交わすことになっている。
 男性と娘の面会交流は、妻との間で暫定的に「月一回二時間」とした。だが、正式に定める調停がストップ。仲介役の支援団体も、やはりコロナ禍を理由に業務を休止し、娘とはこの二カ月、会えていない。

◆69%が「次回未定」市民団体アンケート
 男性と同じように家裁で期日を取り消された人は多い。市民団体「共同親権運動・国家賠償請求訴訟を進める会」が四月二十日から二十三日まで会員らに行ったアンケートでは、面会交流や離婚、子の監護者指定などを巡る家事事件で審理中の九十四人が回答。69%の六十五人が取り消しや延期によって次回期日が決まっていないと答えた。
 期日の取り消しが続出するのは、最高裁が緊急時の事件処理などを定めた「新型インフルエンザ等対応業務継続計画」に基づき、全国の裁判所が業務を絞っているためだ。東京家裁は緊急事態宣言を受け、四月八日から五月六日まで緊急性が高いと判断した事件を除き、家事事件の期日を取り消した。その措置は十五日までの延長が決まった。
 最高裁家庭局は「期日の指定や取り消しは裁判官の判断で行われる。感染リスクを避けて裁判所に必要な機能を維持するためにはやむをえない」と説明する。
 しかし、期日が取り消された家事事件の多くは面会交流や離婚、養育費、父母のどちらを子の監護者にするかなどを決めるためのもので、当事者にとっては緊急性のある問題だ。

◆専門家「司法が介入して断絶防止を」
 裁判所の対応について立命館大の二宮周平教授(家族法)は「別居の親は普段会えない子どものことを心配しているし、子どもは親と会うのを楽しみにしている。面会交流は離れて暮らす親子をつなぐ権利なのに、司法はこうした大切な人権を守ろうとしていない」と指摘。「裁判官が密集を避けるために調停を開けないというなら、権利侵害を受ける人に緊急性が高い事案だとして仮処分を出すように申し立ててもらい、面会交流の頻度などを職権で仮に定める方法も考えられる」と積極介入を訴える。
 調停が終わった後でも、子どもに会えない親は多い。子どもと別居中の親を対象にした市民団体「共同親権・共同養育草の根活動」のアンケートで、百七人の回答者の76%が感染が拡大した三月以降、子どもと会えなくなったり、会う頻度や時間が減ったりした。
 二宮氏は「同居親が感染リスクを心配したり、別居親も遠慮したりしているのだろう。でも、親子を断絶させてはいけない。密集が心配なら公園で会ったり、直接会うのが難しいならオンラインのテレビ通話もできる。コロナ禍だからこそ工夫して、面会交流を続けてほしい」と話している。

家裁審理 相次ぐ停止 面会継続へ司法介入を

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