両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

令和5年1月22日、産経新聞

親権、養育費…転機迎える離婚後の子育て

 子育てに関する法制度を議論してきた法制審議会(法相の諮問機関)の部会が昨年11月に公表した民法改正の中間試案について、法務省がパブリックコメント(意見公募)を行っている。離婚後も双方の親に親権を認める「共同親権」が盛り込まれたことで注目されたが、養育費や離婚後の親子の面会交流など、試案には他にも重要な改正項目が示されている。今年は家族を巡る制度の「転機の年」となりそうだ。

子育ては両親の責務

 部会が公表した中間試案では、子供の身の回りの世話をしたり子育ての重要事項を決めたりする「親権」について、現行の単独親権を維持する案とともに、離婚後も双方の親に認める「共同親権」を設ける案も併記。これ以外にも、幅広く現行制度の改正案が提示された。
 注目されるのは、婚姻関係の有無に関わらず、子育てを「両親の責務」と明記した点だ。一見、当然のように思えるが、現在の民法に明確な規定がなく、子供と別居している親が離婚後の子育てに関わらない「口実」となっているとの指摘もあった。
子育てを両親の責務と明記したことが、今回の改正案の理念面での「骨格」だとすれば、実務面で骨格となるのが、養育費と面会交流に関する制度の改正案だ。
厚生労働省が平成28年に行った調査によると、別居する親が子供と同居する親に支払う養育費について、支払いを受けている母子家庭は24・3%に過ぎない。
 このため改正案では、支払いを確実にできるよう、離婚した双方が合意していれば、養育費の支払いが滞った場合でも別居親の給与などを差し押さえる権利を同居親側に与えることを提案。合意がなくても、裁判なしに一定額の養育費請求権を与える制度を新設する案も盛り込んだ。

複数案で意見募る

 一方、別居親にとって切実な問題なのが、子供との面会交流だ。厚労省の調査では、別居親と面会交流を実施している母子家庭は3割弱。父子家庭でも5割弱にとどまる。
 面会を巡るトラブルへの懸念が背景にあるが、試案では、離婚調停中でも裁判所の観察下で面会交流を認める手続きを創設する案も示されている。
ほかにも、養育費や面会交流の取り決めがなければ離婚ができない新たな仕組みを導入する案も、取り決めなしに離婚できる現行案と併記。さまざまな項目で複数案を提示し、意見を広く募る形を取っている。
 法務省関係者は「子育てが両親の責務であると明記し、養育費と面会交流の問題が前進すれば、離婚後の子育てに関する問題解決が一定程度、進展する可能性がある」と指摘する。

 パブリックコメントの期間は今年2月17日まで。

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