平成24年2月2日、東京新聞
ハーグ条約の前に「国内での交流改善を」~子どもの共同親権訴え、「会いたい」嘆くイクメン
男性の育児参加が増える中、離婚後に子どもとの望む交流ができずにいる父親も増えている。日本では片方の親にしか親権を認めず、元妻から面会を拒絶されるケースが続出しているためだ。国際結婚が破綻した後の子どもの扱いを定めたハーグ条約の批准に際しても、この「単独親権」の前時代性がやり玉に挙がっている。離婚後の”イクメン”を取り囲む現実とはー。(中山洋子)
三十代の公務員男性の妻は二年前、大阪の自宅から二歳の娘を連れて出ていった。「子どもを連れて、海外で再就職したい」と望む妻に反対したことがきっかけで、離婚協議中のことだった。
最初の半年は、娘に自由に電話できたが、その後「土曜の朝にこちらからかける」と通告され、着信は一切拒否された。その電話も途絶え、千葉県に転居した妻が、家裁に子どもと一緒に暮らせる監護権を申し立てた。
妻側は当初、家庭内暴力(DV)も理由に挙げたが、男性は「事実無根」と反論。現在は結審し、審判を待つ。二年近く会えないまま、娘は四歳になった。誕生日に送った贈り物はすべて返されている。「どれだけ大きくなっているのか。道で擦れ違っても分からないかもしれない」と嘆く。
男性を支援する「共同親権運動ネットワーク」運営委員の宗像充さん(三六)は、「子育てに参加する父親が増えているのに、離婚後の養育をめぐる問題は置き去りにされたまま」と指摘する。
共同親権が主流の欧米では、自分が相手を嫌っているとの理由で元夫や元妻と子どもを合わせないのは「虐待」とみなされる。離婚後も親子関係は続くという考え方だ。日本ではもともと父親にだけ親権が認められていた家父長制度の名残で、民法はどちらか片方にしか親権を認めていない。
国際結婚の破綻後、一方の親が子どもを国外に連れ去るのを防ぐハーグ条約への加盟については、専門家や当事者の間でも賛否が分かれる。だが、その批准を強く迫る米国が攻め立てている急所は、この点にある。
近年、父親と子どもの面会を拒む理由として、家庭内暴力から母子を守るDV防止法を悪用するケースも目立つという。暴力は論外としても、宗像さんは「夫婦間の問題と、親子間の問題は全く別。第三者が加わるなど、子どもにとって一番いい面会方法を考えればいいだけの問題で、極端な話、犯罪者であっても子どもの会う権利はあるはずだ」と強調する。
実際、「子どもに会いたい」という親の声を受けて、昨年六月の民法改正で、ようやく親権のない親と子の「面会交流」が明文化された。だが、宗像さんは「現場の裁判官の意識は変わっていない」と批判する。
裁判になった場合、有利なのは「一緒に住んで養育している親」。国内で「連れ去り」が続出するのも、既成事実化が目的と見られ、「どっちが先に子どもを奪い去るか、という競争になっている」(前出の男性)。
養育を夫婦間で話し合う機会さえ担保されていないという。この男性は「米国では条件が同じなら、一緒に住まない親にたくさん会わせる約束をした方を養育者に選ぶルールがある。両親により多く会えるので、子どもにとって最善の方法ではないか」と訴えた。
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