両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

平成25年5月25日、朝日新聞

親子引き離しに注意点 ハーグ条約加盟で最高裁通知へ

 国際結婚が破綻(はたん)した際の子どもの扱いを定めた「ハーグ条約」加盟に向け、最高裁は近く、裁判所の執行官が親から子を引き離す際の注意点を、全国の裁判所に通知する。「親の腕から強引に引き離さない」「寝ている乳児を抱き上げるのは可」など、主に子の心身に配慮しており、加盟後のガイドラインとなる。

 ハーグ条約では日本人の親が16歳未満の子を国外から日本に連れ帰った場合、もう一方の親が求めれば、原則として元の居住国に子を戻す必要がある。加盟は22日に国会で承認され、国内手続きを定めた関連法も今国会で成立の見通しだ。

 法案では、子を戻すよう求められた親が応じない場合、応じるまで裁判所が親に金銭の支払いを命じ、経済的・心理的圧力をかける「間接強制」を先に行う。

 それでも応じなければ、裁判所職員である執行官が強制的に親から子を引き離すため、家の鍵を開ける▽家の中で子を捜す▽親の抵抗をやめさせる――ことなどが認められる。ただ、親の不在時をねらって執行官が子を連れ帰ることはできず、親子が一緒にいる時しか子を引き離せない。

 最高裁が今回通知するのは、執行官が強制手段に出る時、どんな点を注意すべきかを列挙したもの。全国の執行官や裁判官、書記官らが話し合った際の、多数意見をまとめた。(1)親が子を抱きかかえて放さない場合、原則として強引に引き離さない(2)子どもが拒絶したら、無理やり連れていかない(3)寝ている乳児を抱き上げ、連れていくのは可能(4)親子が一緒にいるか不明でも、家に入ったのを見た人がいるなど一緒にいる可能性が高い場合は鍵を開けても構わない――とする。

 親の対応によっては、繰り返しの接触や、粘り強い説得が求められそうだ。

 ■国内離婚でも子に配慮

 執行官による子の引き離しは、国際結婚ではない、日本国内の夫婦が離婚したケースでも頻繁にある。

 10年ほど前まで、親権を得た親に子どもを引き渡すよう裁判所が命じても従わないなどの場合、1日あたり数万円程度を支払わせる間接強制の手段を取るのが大半だった。その後、それでも従わない親が増えたため、執行官の直接的な引き離しが急増。昨年は131件に上った。

 このため、保育園や小学校から帰宅する子どもを執行官が強引に連れていったり、執行官が親ともみ合いになったりするトラブルが起きている。

 ハーグ条約加盟のための関連法案は、まずは間接強制を先にすることや、引き離しの際に親子が一緒にいることなど厳しい条件を規定している。一方、国内の離婚では、こうした明文規定がない。トラブル回避のため、裁判官や執行官の間では、ルールの明文化を求める声が出ていた。

 裁判所内部では、ハーグ条約加盟を前に、こうした国内の問題も話し合い、原則はハーグ条約のガイドラインを適用し、「引き離しは通学路や学校などではなく、自宅で行う」との方向性を打ち出した。最高裁は近く、これも全国の裁判所に通知する。(田村剛)

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