平成26年7月22日、千葉日報
離婚後の親子のふれ合い 「面会交流」めぐる調停・審判増加
「面会交流」という言葉を知っているだろうか。夫婦の別居中や離婚後、一緒に暮らしていない親と子どもが定期的、継続的に交流することだ。子どもが生きていくうえで大きな力になるとされる面会交流をめぐって家庭裁判所への調停、審判の申し立てが全国的に増えている。千葉家裁でも増加傾向が続く。離婚時に面会交流の仕方を取り決めるように民法が改正されたことに加え、少子化や父親の育児への関心向上が背景にあるとみられている。
面会交流は直接の対面のほか、電話や手紙、メールによる意思疎通も含む。民法では、回数など内容の決定をまず夫婦間の協議にゆだねており、調わなかったり協議ができない場合は家裁が定めるとしている。
千葉家裁の集計では、千葉県内の昨年1年間の調停受理件数は416件。203件だった2004年に比べて2倍になり、08年からは一貫して前年を上回り続けている。審判も04年の28件から昨年は71件と約2・5倍になった。ほとんどが子どもと同居していない親が同居している親に面会交流を求めるケースだが、同居の親が面会交流の禁止・制限や実施を求めるケースもあるという。
関係者によると、増加要因とされるのが、少子化で親族を含めて子どもへの関心が高まっていることや父親の育児への意識の強まり。また、12年4月施行の改正民法で養育費の分担とともに面会交流も、“努力規定”ながら子どもの利益を最優先に考慮して決めるように条文に明示されたことも大きいとされる。離婚届に面会方法などの取り決めができているかを任意で記す欄も設けられた。県内の離婚件数は年間1万1千件台で高止まりしており、面会交流の調停や審判は今後も増加が見込まれる。
千葉家裁は「子どもにとって面会交流は大切」との認識のもと、その実施の重要性を説明したリーフレットを作成。離婚調停などでの来所者に渡している。面会交流には当事者双方の意欲と合意が欠かせないとして、裁判所内で試験的な面会ができるように、ぬいぐるみやおもちゃをそろえた部屋も用意した。
今月開催した、家裁の運営に有識者らの意見を反映させる委員会でも面会交流を取り上げ、意見交換を実施。委員会後、取材に応じた安藤裕子所長は「(面会交流が)離婚した親子のごく自然なスタイルとして広く理解されるべき。一番大事なのは子どもの立場で考えること。離婚は仕方ないが、父や母として子どもの福祉に目を向けることを忘れてはならない」と述べた。
◆「親子の縁は切れない」
交流面会を援助している公益社団法人家庭問題情報センター千葉ファミリー相談室の鈴木尚・面会交流部長(68)は「離婚のしこりが残っている」と面会の実現の難しさを打ち明ける。実施の合意は成立しても、具体的な日程や場所、面会方法を決めようとすると、当事者間でもめることが多い。
調整に苦心しつつも、鈴木部長は「子どもは親をモデルに成長していく。面会交流は子どものより良い将来のために絶対必要。両親の離婚で不安になっている子どもに安心感を与えることにもなる。両親の成長にもつながる」と意義を説明した。
調停などが増加傾向にあるとは言え、離婚件数から見ればほんの一握り。「裁判所などの世話にならずにうまくいっているケースもあるのでは」と期待を込めて推測する一方、「不安を抱えたままの子どもがいるのは事実。夫婦の対立を乗り越え、親の責任として面会交流を考えてほしい。親子の縁は切れないのだから」と訴えた。