平成28年10月6日、朝日新聞
(声)離婚後の親子の面会交流は大切
元家庭裁判所調停委員 中島信子(新潟県 73)
離婚後の「親子断絶」を防ぐ法案について論じた「あすを探る」(9月29日朝刊)を読みました。離婚で別居した親子の面会交流の推進に懸念が示されていますが、違った意見を述べます。
私は家庭裁判所の調停委員として28年間、多くの離婚調停を担当しました。現在は、離婚後の面会交流の支援機関に携わっています。そこで、面会交流の大切さをひしひしと感じています。
別居した親と会えずに育った人は、生涯にわたって消えない傷が残ります。人生で大きな問題にぶつかったとき、自分は何者なのか悩む人がいました。顔も知らぬ親の遺産の相続通知が来たとき、その親から愛情を受け取れなかったことへの怒りが噴き出す人も。父親に会わせてくれなかった母親を恨み、嫌悪感を募らせる人も数多く見ました。
困難を伴うからといって、面会を避けたままでいいとは思えません。離婚後の親子の断絶を防ぐために国は予算を使い、専門家を養成してほしい。元配偶者による暴力や子の連れ去りを恐れる人には、安心して面会ができる施設を整備してほしいと願います。
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