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離婚後もパパとママであり続ける共同親権とは?「離婚≠永遠の決別」イタリアの考え方
Ostia ローマ在住の2児のママ
2006年渡伊、2008年からローマ郊外の港町オスティアに移住。ローマっ子のダンナ、ワンパク盛りの1才と4才の息子くんを中心に、家族や友人に支えられて翻訳業と育児を両立中。楽しい”イタリア働く子育て事情♪”をお届けします!
離婚後でも、子どものために毎日連絡を取ったり会ったりするイタリア人。離婚=永遠の決別というイメージが強い日本とはかなり異なります。新しい相手との連れ子や子どもが出来ても、元夫・妻との実子と会う時間も大切にし、頻繁に交流する様子には大変驚きました。そんな日常のひとコマから日本と欧米の離婚後共同親権について考えてみました。
日本では離婚の際、子どもの親権はどちらか一方の親にのみ認められることになっています。しかし、イタリアではまったく違います。
法的な別居後も、子供は両方の親との関係を保つ権利があり、両方の親には親として平等の義務があること(Art. 155, 155 bis C.C)、又、2006年の法改正後は、子供が両方の親に委ねられる(出典:italia-ryugaku.com)
というのが大前提。これは、「共同親権」と呼ばれるものです。一方で
日本においては、婚姻中においてのみ、民法第818条第3項により、父母の共同親権が定められている。夫婦が離婚した場合にはこの共同親権を、単独親権にしなければならないため、婚姻中から子供を奪い合う紛争となることが一部で問題視(出典:ja.m.wikipedia.org)
されています。日本でも、別れた親子の面会交渉権というのか認められていますが、親権者が強制的に非親権者に、事実上面接させないという事例も多々起こっているとか。実はこの現状、先進国としては数少ないケース。
実は、世界各国の大半が離婚後も「共同親権」!
なんです。
ほぼ全ての南北アメリカ大陸諸国、ほぼ全てのヨーロッパ諸国、オセアニア両国、アジアの中国・韓国が、結婚中も離婚後も共同親権である。「2人の親を持つのは子供の権利であり、親が結婚していようと、いまいと関係がない。」とされている。(出典:ja.m.wikipedia.org)
ただし時間的、生活的な面で、双方が全ての意味で完全に親としての義務を折半することは現実的でないので、実際は、拠点としてどちらかの親に委ねられます(主要養育権)。
裁判官は、何よりも子供の権利を最優先し、主に委ねる親を選択(出典:italia-ryugaku.com)
するのです。小さい子どもほど、母親に預けられるケースが多いのですが、だからと言って父親に会わせない、なんてことはありません。子どもには自分の両親に会う権利があるからです。
同時に、両方の親が子供の成長・教育に関わることが出来るよう、子供と離れて暮らしている親との面会、養育費などについて、裁定(出典:italia-ryugaku.com)
します。例え別居・離婚後に新しいパートナーと新しい家庭を作ったとしても、子どもから見たらパパ、ママであることには変わりません。「1週間のうち何日は誰と過ごす」「1年のうち何か月は誰と過ごす」といった細かい内容が決められます。元夫・元妻との実子が、月に2回の週末に新しいパートナーと暮らす家に泊まる、なんてことも普通にあります。
養育費
養育費も、
子供が必要としているもの、両親各々の経済状況、子供がそれぞれの親と過ごす時間などに拠りますが、基本的には子供の権利、つまり両親が別居前の子供の生活スタイルを出来る限り維持することが最優先事項(出典:italia-ryugaku.com)
にして考慮されます。現在、平均的には月に約400ユーロ弱(私立幼稚園の月謝にちょっと足りないくらい)というのが6割ほどだそうです。
住居
夫婦で暮らしていた家にそのまま住む権利があるのは、子どもを主として預かる方の親です。
子供には、両親が別居前の生活スタイル(子供が成長した家)を出来るだけ維持する権利があることから、子供が主に委ねられる親側(出典:italia-ryugaku.com)
に、それまで住んでいた家に暮らし続ける権利があるからです。例えば、家主が母親でも、父親に主として子どもが委ねられることになったら、子どもと父親がこれまで暮らしていたその家に残ります。母親は自分の家から出て行かなくてはなりません。
共同親権のメリット・デメリット
欧米では1980~2000年初めにかけて制定されている共同親権。イタリアでは2006年から施行されています。次の表は、2008年から2012年までの別居数と離婚数、および共同親権の実行数を表しているもの。一番下の二項目が、別居時の共同親権数と、離婚時の共同親権数(いずれも100件につき)です。2012年には別居時には約9割、離婚時でも7.5割が共同親権を実行しています。では、そのメリット、デメリットを見てみましょう。
◎メリット
・子どもの発育に欠かせない父母の存在を確保
父親も母親も子どもの発達に重要な役割を果たしている。離婚の悪影響を最小限にするには、子どもが双方の親と、充分な関わり合いを維持することが必要である。ヨーロッパ諸国や南北アメリカ大陸諸国が共同親権に移行した最大の理由は、この点にある。(出典:ja.m.wikipedia.org)
離婚後の子供の状態に大きい影響を及ぼすのは、育児の質と経済的安定性である。共同親権では、その両者が良好となり、子供の行動、精神、学業の面で、全体と比較して遜色ない発達を示す。(出典:ja.wikipedia.org)
と考えられています。
・別居後、離婚後の元夫婦の協力体制が整う
共同親権制度により、子どもを奪い合う必要が無くなれば、双方の親が、子どもの精神的な成長のために、協力する関係が構築される。(出典:ja.m.wikipedia.org)
別れても、子どものために電話連絡を頻繁にしたり、進路相談に一緒に行ったり。離婚時に、子どもの取りあいで揉めることが少ないので、逆に良好な関係を築けるというデータもあります。
・養育費の支払いが停滞しない、支払額が増える
子どもの顔も見られない遠方から、義務に追われてただ送金する日本の養育費と異なり、離婚後も親子関係を(出来るだけ)今までのように続けるため、ちゃんと養育費が支払われる傾向にあります。
✖デメリット
・子どもが疎外感を抱いてしまう
離婚後共同親権では、父母それぞれの家庭を行き来して養育される場合が多いが、その場合、子はどちらの家庭にも属さないという疎外感を抱くことが多い。(出典:ja.m.wikipedia.org)
これは特に、もしどちらかの親が再婚し、異父・異母弟妹が生まれた場合、自分だけ二軒の家を行き来しなければならない状況に疎外感を持ってしまう傾向にあります。
・子どもにとっては辛い!?二重生活
習い事、食生活、勉強方法、しつけ・・・考え方の違う親のところを行ったり来たりするため、特に小さい子どもにとって、二重生活の苦労が問題になることも。両親の子育て方針が一致せず、合意に至らないためです。これを防ぐには、離婚前に既成の育児計画を参考にして、最初にしっかりした養育プランを作成しておくなど、色々な対策が考えられます。
・その都度、元夫婦で話し合いが必要
進学先、保護者の承諾が必要な医療行為の実施や未成年結婚などの重要事項から、子どもに着せる服、習い事、お小遣いの額に至るまで、すべて養育に関わることは片親だけで決めることは出来ません。その都度別れた元夫婦で話し合いをしなけらばならず、なかなか合意に至らない場合も。だから子どもの二重生活という事態が発生する訳です。それでも、何より子どもにとって有益なことを最優先して物事が決められます。
・遠方に引っ越しにくい
離婚後共同親権を実施している国では、親に対し転居の制限を行い、元夫、元妻の住居から離れることがないようにし、相手方の親権の行使が物理的距離のために阻害されないようにしている。このため、他の町への転居は相手方の同意と裁判所の許可を要する(出典:ja.m.wikipedia.org)
国際結婚の場合はさらに大変です。子どもを連れて、イタリア国外から出て一時帰国する際にも、当然相手方の合意が必要なのです。
裁判長の許可無く子供を国外に連れ出した場合は、ハーグ条約国際的な子の奪取の民事面に関する条約により、子供をもとの国(居住所地)に返還される可能性があり、またイタリア国内では、刑事裁判に問われる可能性、またもう一方側より、条件(委ねる親、離婚手当など)の変更を訴えられる可能性があります。(出典:italia-ryugaku.com)
何より子どものために
欧米では、共同親権により子どもの予後に悪影響が見られる場合は、裁判所が単独親権に変更する裁定を下すこともあります。また、どちらかの親にDVなどの明らかな非がある場合も、単独親権になります。だからイタリアでも上の表で別居・離婚時に100%の共同親権とはならないんですね。
子どもの権利に関する国連の委員会は、単独育児は、そうすることが子どもの最善の利益にかなう場合だけに限定しなければならないという考えを支持(出典:ja.m.wikipedia.org)
しているからです。もちろん、共同親権から単独親権に変更する際も、同居しない親と子の面会の権利と義務を認め、まったく会えない、会わせない、というような状況にはならないように決定します。
日本でも共同親権にすべきなの?
現在では離婚後共同親権については、日本の民法では不可能であり、離婚時には必ず親権者を決定する必要がある。すなわち片親の親権を剥奪する必要がある。(出典:ja.m.wikipedia.org)
というのが2016年現在の状況です。ですが、
2009年4月23日に読売テレビがスーパー・サプライズという番組で、「離婚後に共同親権を認めない国に怒る」という主張を放送したところ、番組中に寄せられた視聴者からの意見は、「分かる」という人が10220人(77%)、「分からない」という人が2976人(23%)であった(出典:ja.wikipedia.org)
2011年に産経新聞がネット上でアンケートを行い、両親ともに親権を持つ欧米型の共同親権制に移行すべきかを聞いたところ、2122人より回答があり、賛成58%、反対42%であった(出典:ja.wikipedia.org)
という世論調査の結果も出ており、国会でもだいぶ以前から議論されているテーマです。
そもそも離婚は、子どもの人生においてどんな形でも影響を及ぼさない訳にはいかない一大事。それ自体に変わりはありません。また共同親権にも長所短所があり、一概にこの形が最良、と言い切れないとも思います。ただ、できるだけ子どもの立場を考慮し、選択肢として共同親権を選べる(裁判官が裁定できる)ようになるのは悪いことではないと思いました。もちろん、この記事を読まれている方は離婚の話なんて不要、という方も大勢だと思いますが、これを機に日本と欧米の制度の違いや親権について少し考えてみて頂けたら幸いです。
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