平成28年9月13日、朝日新聞
離婚した夫婦間の子ども、引き渡しのルール明文化へ
離婚した夫婦間の子どもを確実に引き渡す仕組みが必要だとして、金田勝年法相は12日、諮問機関の法制審議会に民事執行法の見直しを諮問した。引き渡しに従わない場合、応じるまで金銭の支払いが加算され続け、さらに裁判所の執行官が強制的に引き離す仕組みも検討する。法務省は法制審の答申を受けて2018年ごろの改正法案の国会提出を目指す。
離婚などに際して親権者らは、子と同居するもう一方の親らに対し、子を引き渡すよう裁判所に申し立てることができる。国外に連れ出された16歳未満の子の引き渡しについては、日本が14年に加盟した「ハーグ条約」が適用され、13年に成立した国内法で手続きを定めた。一方、国内での子の引き渡しの強制執行には法律上ルールがなく、動産の引き渡しを定めた民事執行法を子に適用してきた。
最高裁によると、子の引き渡しの強制執行を申し立てた件数は昨年全国で97件。このうち27件が実際に引き渡された。民事執行法には引き渡し方法などの規定がないため、執行官は運用で、同居する親らが一緒にいる場面に限る▽親らの自宅に限る▽子の心理についての専門家を可能な場合は同行させる――などの対応をしてきたという。
だが、専門家からは、法律で明文化されないと対応が一律にならず、「子の心身に悪影響もありうる」との指摘が上がっていた。
ログイン前の続き法務省は、国内での子の引き渡しについても、ハーグ条約の国内法を参考にした仕組みを検討。裁判で引き渡しが決まっても応じない場合、まず金銭を支払わせる「間接強制」を命じる。それにも従わない場合は、裁判所の執行官が子のいる場所に出向いて引き渡しを求める。子への影響を考慮し、「親などが一緒にいる時しか連れ出せない」とする規定を盛り込むことも法制審で検討する。
このほか、今回諮問した民事執行法の見直しでは、裁判で確定した子どもの養育費や損害賠償金などが受け取れない時に、申し立てがあれば、裁判所が相手の預貯金口座の情報を金融機関に明らかにさせる制度の導入を検討する。
また、競売物件が暴力団の事務所に使われるケースがあることから、不動産の競売から暴力団を排除する仕組みづくりも議論する。最高額の入札者が暴力団の関係者かどうかを裁判所が警察に照会し、該当すれば売却できないようにする。(金子元希)
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〈日本弁護士連合会家事法制委員会委員を務める榊原富士子弁護士の話〉 引き渡し規定の明文化は評価したいが、子どもの気持ちに配慮をした仕組みが求められる。一定の年齢以上の子どもが「行きたくない」と言ったとき、どう対応するかが課題だ。ハーグ条約の国内法をもとに、間接強制の手続きを定め、相手と子どもが一緒にいることを条件にすると、引き渡しに時間がかかるケースも考えられる。速やかな執行につなげるため、多様な意見を踏まえた検討が必要だ。
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