両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

平成29年5月17日~18日、週刊女性

週刊女性5月30日号
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※週刊女性PRIME掲載記事

元夫が娘と面会中に無理心中「ごめんな。行かせてごめんな」母親が涙の告白

「今はまだ、娘が近くにいるような感じがするんです。だから、まだ本当に寂しいという気持ちが湧かなくって」

 娘の遺影と遺骨を前に母親の中村明子さん(仮名)は、大切な娘(当時4)が殺されたショックを、まだ実感できない。

 殺したのは父親。中村さんの元夫だ。

 4月23日、月に1度の面会交流の日の夜、兵庫県伊丹市のマンションの一室で、娘は命を奪われた。娘の首にはネクタイが巻かれ、元夫はネクタイで首をつっていた……無理心中だった。

 元夫は昨年11月、自暴自棄になり自ら離婚届を提出。その後、寂しくなったのか復縁を申し入れてきたという。

「借金はする、酒は飲む、暴言を吐く、部屋を荒らす、浮気をする。もう限界で、あのストレスの日々に戻ることは無理でした。弁護士を立て離婚調停を始めました」

 調停中だったが、昨年12月、今年1月2月と、中村さんは娘を父親に会わせている。

「本当に空気が読める子で、元夫に会って帰ってきたとき“パパ、謝ってたよ。許してあげーや”って私に言うんです。私はもう会いたくなかったので“近くだからまたすぐ会えるからなぁ。おもちゃもこっちに全部あるで”なんてごまかして……」

 必死に両親の仲をとりもとうとする娘の健気さが、その言葉からは読み取れる。

 4月に離婚調停が終わり、月1回の面会交流が決定。元夫が娘に手をかけたのは、その1回目の面会日だった。

「朝10時に、うれしそうに出かけていった娘を見たのが最後です。面会交流終了時間は午後5時だったんですが、何の連絡もなくて、午後7時ごろに警察に連絡をしました。午後9時過ぎ、元夫の兄と警察官がベランダから窓を割って部屋に入ったところ、2人が倒れていたそうです」
 後日、警察に見せてもらったマンションの防犯カメラには、うれしそうな娘の姿が残されていたという。

「映画を見て、おもちゃを買って、最後にちゃんと父親したかったんでしょうね。娘まで勝手に連れていって、最後の最後まで自己中で……」

 娘を行かせなければよかった。そんな思いはないのか。中村さんは、

「娘の遺体と対面したときは、“ごめんな。行かせてごめんな”と後悔ばかりでしたが、結局いつかは起こっていたんじゃないかと思います。弁護士さんからも“連れ去りは大丈夫ですか”と第三者が立ち会う施設の利用なんかもすすめられていましたけど、まさか自分の娘に手をかけるなんて思いもしませんでした」

 そして、今回の事件の原因についてふれる。

「彼の弱さが起こしたものだと思っています。養育費も払えないように仕事も辞めていたみたいで、私を困らせてやろうという気持ちがあったんだと思います。それと、やっぱり帰り際、子どもが可愛くなったのかもしれませんね」

 実の娘を亡くした今だからこそ、中村さんは思うところがあるという。

「子どもが会いたいと言うのなら父親には会わせるつもりでしたし、その気持ちを酌むのが親の役割。子どもに会えないのは寂しいでしょうし、子どもにとっても面会交流は必要です。私がお話をすることで、2度と同じような事件が起きないように、何かが変わればと思っています」

 児童心理学の専門家で東京国際大学の小田切紀子教授は、

「問題が起こるかもしれない。連れ去られるかもしれない。そういった場合には、家庭問題情報センター(以下、FPIC)のような第三者が立ち会っての面会交流も可能です。なにより何のために行っているのか。父母がしっかり理解することが大切です」

『親子の面会交流を実現する全国ネットワーク』略称『親子ネット』によれば、毎年約24万組の離婚が成立しているが、子どもとの面会交流ができていない親は7割、毎年約16万人の子どもが別居親との関係を断絶させられているという。夫婦は離婚すれば他人だが、子どもにとっては父親も母親も変わらぬ親。小田切教授は、

「だからこそ、夫婦の問題と親子の問題は、切り離して考えてほしい」

 と話し、さらに続ける。

「子どもにとって離婚は、青天の霹靂。妻と夫の関係を終えたとしても、父と母という役割から、子どもの負担をどうしたら減らせるか、子どもをいちばんに考えてほしい」

 とはいえ、お互いにいがみ合っている夫婦は、不寛容の感情が先走る。その結果、別居親が子どもに会えないケースが続出しているーー。

夫が語るリアルDV被害「お前が追い込んだ! 一生後悔しろ!」と殴り書きの遺書

「今はまだ、娘が近くにいるような感じがするんです。だから、まだ本当に寂しいという気持ちが湧かなくって」

「毎日毎日、仕事してテレビ見る時間もないんだよ、洗濯だってしなきゃいけない、食器だって手洗いしないといけない。いい加減にしてよ。お前は結局マザコン野郎なんだよ」

「うるせぇ、本当にムカつくんだよ、この野郎」

 泥酔した妻が、空になったワインのボトルを夫に投げつけながら、そうなじる。エンジニアの山田良太さん(仮名・40代)が味わった、家庭内DVのリアルな修羅場だ。

 夫婦ゲンカは犬も食わない。そう言われていたのは遠い昔のおとぎ話。近年、夫婦ゲンカがDVと呼ばれるようになり、社会問題化した。

 警察庁の発表によると、昨年1年間に全国の警察が受け付けたDVの相談件数は6万9908件。そのうち事件として検挙された件数は8387件。いずれも過去最多となった。

 女性の被害者が全体の約8割を占めるが、男性からの相談が増加しているのも最近の傾向だ。昨年は初めて男性の相談件数が1万件を超えた。

 デートDVなどの防止啓発活動に取り組むNPO法人エンパワメントかながわの阿部真紀理事長はDVの類型を、

「身体的暴力、行動の制限、精神的暴力、経済的暴力、性的暴力の5つに分類されます」と説明したうえで、DVが深刻化する様子を次のように話す。

「なぜ、約束を守れない、お前が悪い、と最初は機嫌が悪かっただけのものが、徐々にエスカレートして、暴言や暴力へ発展します」

 そして、被害者が女性でも男性でもDVとしての構造は同じだと説明を加え、深刻化する理由について、

「暴力や暴言の後、加害者は被害者に“もうしない”“ごめんね”“本当は愛しているのよ”と謝る。そこで被害者は、約束を破り相手を悲しませた自分が悪いんだと思い込まされるんです。この繰り返しによって、徐々に被害者の自尊心を奪い、被害者をコントロールしていくんです。被害者からの相談では、“自分が悪いんです”と話す人は少なくありません」(阿部理事長)という。

「出産の翌年、甲状腺機能亢進症を発症したんです。そのせいか、思うように家事ができずアルコールを飲む機会が増えました。あるとき飲みすぎだと思い、ウイスキーのボトルを隠したんです。そうしたら妻が怒りだして……。私に文句を言い、なじるんです。家事ができないのも、お前の出来が悪いからだ、と。そんな日常の繰り返しでした」 

 エンジニアの山田さんは、大学時代に知り合った妻と、'03年に結婚。'06年には今年で11歳になる長女が誕生したが、その前後から始まっていた妻の異変は、アルコール摂取によって増幅した。

 精神的なDVが始まると同時に、妻が壊れ始めた。

 外出先で飲んで警察に保護される、家の中で暴れて包丁を持ち出す、子どもを連れて勝手に実家に帰り3か月以上も帰ってこない、医師にアルコール依存症の外来を紹介されても酒量は一向に減らなかった。そして'13年3月、

「会社に保育園から、妻が迎えに来ないという連絡があったんです。家に帰ると妻はリビングに倒れていて、大量に薬を飲んだ跡がありました。《お前の行動言動が私を追い込んだ! 自分のバカさかげんを反省しろ! 一生後悔しろ!! 》という殴り書きの遺書が残されていて……」

 山田さんが救急車を呼び一命をとりとめた。当初、妻は“お前が悪いんだ”と語っていたが、もう娘には会わせないと山田さんの母親が激怒。もう娘に会えないかもしれないと思った妻は、反省を口にするようになった。

《私はどうかしていました。今回も取り返しのつかないことをしてしまい、その事で皆様に大変迷惑をかけてしまったことを心の底から反省しています》《娘を大切にし、娘にパパの大切さを教えます。暴言を吐くようなことはしません》と反省文まで書いた。

「子どものこともあるし、今後は改善するのではないかと希望を持ちやり直すことに決めました。でも、この選択が間違いだったかもしれません」

 と山田さんは弱々しく語った。

 反省も長くは続かず娘が小学校に入学すると、再び飲酒。暴言、暴力、家出、知らない男と食事、朝帰り、出会い系サイトからのお金の振り込みや、“寝ている間に刺してやるからな”という脅迫も。400万円ほどあったはずの貯金も、知らぬ間に妻が3年間で使い切ってしまった。

「我慢するしかない」と思った山田さんは、争いを避けるため仕事から帰ると自室にこもるようになった。ドアや壁を容赦なく叩き罵声を浴びせる妻。顔を合わせればケンカし、もみ合いになったことも。

「寝室で動画を見ていたんです。するとその音がうるさいと、妻が怒りだしました。何度も何度もドアを叩いて叫ぶんです。もう我慢ができず、近くにあった手持ちのマッサージ器で威嚇するつもりが抑えきれずに妻を殴ってしまったんです。……そして妻に警察を呼ばれました。私は一方的な被害者ではなく加害者でもあることを認めます」

 '14年10月、警察ざたになる出来事があった。山田さんが深刻な表情で振り返る。

 妻からは暴行に対する手書きの謝罪文を要求された。周囲からは書くなと言われたが、家庭を壊したくないという思いから手書きで記したという。

 夫の非を責めながら、自分は朝から酒を飲んで暴れる。自分のものを隠したと夫を責める。限界を感じた山田さんは、市の福祉課や児童相談所、警察にも相談していた。

 だが、その後も妻の暴走は止まらない。寝室のドアの向こうから罵声を浴びせ続ける。

「何、無視してんだよ、いい加減にしろ。女ひとり、子ひとりてめぇが養えねぇくせに。離婚でいいよ、裁判するか。お前に慰謝料、さんざん請求してやるからな。(ドアを)開けろよ、開けろ」

 止まらない妻に耐えかね、警察を呼んだが、警察官は、

「旦那さんが今日は外で泊まってください」

 との言葉。妻に暴力をふるった反省から、暴走が止まらないときは警察を呼ぶようにしていたが、いつも外で泊まるのは山田さんだった。

 過去には翌朝に家に帰っても、チェーンがかけられ家に入れてもらえない。何度も呼びかけると再び警察を呼ばれたことも。そんな繰り返しに心も身体もボロボロだった。

 家を出よう……。他の選択肢はなかった。会社には翌朝電話をし、休職を願い出た。'15年3月16日のことだった。

 ……別居生活から2年。山田さんは今、アパートでひとり暮らしだ。妻とは娘との面会交流調停をすすめている。

「最後に娘に会ったのは、昨年10月です。11月も会う予定でしたが、直前に“娘が会いたくないと言っている”と連絡があり、それ以降、会えていません。会っても母親が一緒にいるので、会話はほとんどできませんでした。娘も察しているのか、私と目を合わせようとしないんです。今は娘に会いたい。ただそれだけです。娘が心配です」

 あの妻に娘を任せて大丈夫だろうか。そんな不安もあるが、山田さん自身も追いつめられている現状を明かす。

「妻と娘が住んでいるマンションのローンの支払いと、生活費も渡しています。加えて私のアパートの家賃、生活費、弁護士費用。お金がいくらあっても足りません。仕事も手につかなくて、上司には“職場は遊ぶ場所じゃないんだよ”と注意されています。降格し、給料も下がって。もう首をくくるしか……」

 山田さんはそういって、頭を抱える。取材中、「どうして、どうしてこんなことに……」と、うわごとのように何度も何度もつぶやいて、絞り出すように、

「出会わなければよかった。今は毎日そう思っています」

 現在、精神科へ通院し、睡眠薬と抗うつ剤を服用しているという。目の下の深いクマがその苦悩を物語っていた。

 DV事案を多数扱う森法律事務所副代表の森元みのり弁護士は、

「外面的には上品でかわいらしく、一見非の打ちどころのない女性が多いですね」

 とDV妻の特徴を説明。

「女性からのDVでは、身体的暴力よりは、精神的なものが多数を占めます。“出来が悪い”“食べるのが遅いんだクズ”“役に立たない”“家族の足手まとい”といった人格を否定する言葉が含まれるようになると問題ですね」

 山田さんのように暴力を受けるケースも増えているという。森元弁護士が続ける。

「相談に来る方は、妻からDVを受けているなんて誰も信じてくれないし、別れられないと思っている方が大半です。身体的暴力がある事例では、暴力を目撃する子どもに悪い影響があるとして離婚もできるし、親権も取れることが多い。だからこそ悩んでいる方はぜひ1度、相談していただきたい」

 DVがひどくなれば家庭は壊れる。その中で育つ子どもにも当然、悪影響を与える。

 社会心理学者の新潟青陵大学の碓井真史教授は、

「観察学習といって子どもは見たものを学びます。身近で暴力を見ることで、それが当たり前だと自然に身につけるようになる」

 夫婦間のやりとりが子どもの成育を阻害するとも話す。

「子どもにとって親というのは全世界といってもいいぐらい絶対的な存在です。大好きな両親が、お互いに悪口を言っている場合、子どもは非常に不安定な精神状態になる」

 すると、子どもは自らを安定させようと、こんな行動にでることもあると続ける。

「うまく心のバランスを保つため、母親か父親どちらかの味方につくのです。しかし結局、両方の遺伝子を引き継いでいるわけですから、自分のルーツを否定することになる。すると理想の男性像や理想の女性像を持てなくなり、自分がどんな人間になればいいかわからなくなる。現れ方はさまざまですが、情緒不安定な子どもになる可能性も」

 前出の森元弁護士は、母親が子どもに父親の悪口を言わせるケースもあると話す。

「“バカ”とか“臭い”とか子どもを使うケースもあります。ただ加害者側は決まって、私にちゃんと向き合ってほしかった。愛情表現だったと話をします。客観的に見たら、全然愛情とは逆の行動ですよと思うんですけどね。不思議です」

 夫の会社に、夫が浮気をしているとウソの連絡をして、社内で問題となり降格人事を受けた男性もいたという。

 稼ぎ頭の夫を貶めておきながら、法廷の場で話す言葉は“愛している”“別れたくない”と主張するDV妻たちは理解の範囲を超える。今日もどこかで虐げられる夫の悲痛な叫びが聞こえる。

3人の経験者が語る、離婚後の“別居親”と子どもの切ない面会交流の実態

「子どもにとって離婚は、青天の霹靂(へきれき)。妻と夫の関係を終えたとしても、父と母という役割から、子どもの負担をどうしたら減らせるか、子どもをいちばんに考えてほしい」

 児童心理学の専門家で東京国際大学の小田切紀子教授は言う。

 夫婦は離婚すれば他人だが、子どもにとっては父親も母親も変わらぬ親。だからこそ「夫婦の問題と親子の問題は、切り離して考えて欲しい」と小田切教授。

 とはいえ、お互いにいがみ合っている夫婦は、不寛容の感情が先走る。その結果、別居親が子どもに会えないケースが続出している。

娘は私の命です
 佐藤良子さん(仮名)は、昨年10月に面会交流調停が和解し、12歳の娘と月に5時間だけ会うことが認められた。

 職場で知り合った夫と'00年に結婚し、'05年に娘が誕生。

 '12年、娘が小学生になり少し手が離れたタイミングで、保育士の資格を取るために学校に通いたい、と夫に打ち明けたところ、予想外の反応が返ってきたという。

「保育士なんて少子化で先がないし、給料が安い。そんな仕事はやるべきじゃない、と」

 夫の反対を押し切って夜学に通い始めたことで、夫婦関係はぎくしゃくし始めた。

 “お前はバカだ”“何もわかっていない”といった言葉の暴力が始まり、仕事中の夫が家に電話をかけてきて1時間以上の罵詈雑言を浴びせることも日常茶飯事。家事は完璧にこなしていた佐藤さんだが、徐々に夫の顔色をうかがいながら暮らすようになった。

「家を出ていく」。夫がそう宣言したのは、'15年6月。引っ越し業者が夫と娘の荷物を運び出していく様子を、

「ただ立ちすくんで何もできず見ていました。私が家庭を壊したんでしょうか。何を間違えたんでしょうか。私が悪かったのでしょうか」

 今も原因がわからない。

 夫とは今、離婚訴訟中だ。お金はすべて夫が管理していたので、佐藤さんは取得した保育士の資格を生かし、保育園に勤めている。

「娘は私の命です。でも娘は父親も大好きでした。その父子の関係は壊したくない。私のところにも夫のところにも子どもの意思で行ける、本当の自由が与えられる日が来ることを望んでいます」

 昨年12月の面会時の、子どもの言葉が忘れられない。祖母のお見舞いに行った帰りの電車の中でのこと、

「私が“お父さんとも3人でご飯を食べることだってできるかもしれないよ”って話をしたら、びっくりした表情をみせた後、うつむいて“やっぱり家族は一緒がいい”ってつぶやいたんです」

 娘が帰って来ることができる場所を作っておかなくちゃ。そんな思いだけが今、佐藤さんを支えている。

子の口から知った。

どっちも選べないよ
 息子の中学入学後、夫が実家に戻り、引き止めたが息子もそのあとを追った。

 夫が離婚調停を申し立て、対抗する形で吉田さんは面会交流調停を申し立てる。

 周囲の友人などに“お父さんお母さんどっちも選べないよ”と漏らしていたという息子も、父親との暮らしが長くなるにつれ、面会で一切反応をしないように変わったという。片親疎外症候群が始まった、と吉田さんは見ていた。

 小田切教授によれば、

「簡単にいえば洗脳ですね。同居親は別居親に絶対に渡したくないわけです。別居親がどんなに悪い人間か、子どもに毎日のように吹き込んで支配していきます」

 今年3月、上告棄却で離婚が確定、親権は父親が得た。

 4月11日に面会をした息子は、次回と次々回の面会を休みたいと吉田さんに伝えた。

「連絡用にメールアドレスを教えてくれました。ただ、連絡をしても返事はありません。このまま連絡がとれなければもう会うことはできなくなるかもしれません。いつか息子の目が覚めてくれたら……」

 取材中、気丈に振る舞っていた吉田さんの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。

 高木勇樹さん(仮名)は、

 '09年に結婚し、翌年2月に長男が誕生。だが同じころに妻が多重債務者であることが発覚。歯車が狂い始めたという。

 2年かけて借金を整理したが、再び借金をしているのが発覚。'14年7月、妻の実家に相談に行ったが、「嘘をつくな」と義父が激怒。その後、長男と一緒に実家にいた妻とは一切連絡がとれなくなり、弁護士を立てた。

調停の場で知った長女の誕生
「なぜ自分の子どもなのに会えないんだ、という怒りと悲しみ……。今まで味わったことがない感情でした。街中で“パパ”って聞こえると、反射的に振り返っていました」

 長男と会えたのは1年半後。第三者立ち会いのもとだったが、「パパ~」と駆け寄る息子と抱き合うことができ、会えなかった時間を埋めるほど濃密な時間を過ごせたという。

 別居前に妊娠していた妻が長女を出産していたことがわかったのも調停の場だった。戸籍謄本を取得し、名前を知った。その娘とも'16年3月に会うことができたという。

 今年4月には面会交流調停が合意。2か月に1回、3時間だけ会えることになった。

「娘も少しずつ私になれてきているようです。やっぱり可愛いですよね」と喜ぶ一方、

「娘は今年で3歳になるのに、まだ20時間も会うことができていません。長男とももっと遊んであげたい。なにより今は一緒に生活することをしたいですね。ひとつ屋根の下で生活をする。親子なのにそのごく当たり前のことが、できないのがつらいです」

 ただ、高木さんは次のような反省も口にする。

「夫婦でいざこざがあると子どもは置き去りになる。トラブルになったとき相手を思いやることを忘れないでほしい。私にもそれがあれば、今の状態にはならなかったかもしれません。子どもからしたら、両方の親が必要なんです」

 離婚で試されているのは子どもの立場に立った愛情の注ぎ方なのかもしれない。

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