平成30年3月15日、NHK
“子ども返還命令” 拒否は違法 最高裁が初判断
子どもを国外に連れ出した親がハーグ条約に基づく返還命令を拒否したことについて、最高裁判所は、日本の人身保護法の手続きで引き渡しを求めれば、返還の拒否は原則として違法になるという初めての判断を示しました。返還命令に実効性を持たせる判断として同様のケースに影響するものと見られます。
この裁判は、子どもを日本に連れ帰った母親が、ハーグ条約に基づく返還命令を拒否したことから、アメリカに住む父親が、日本の人身保護法に基づいて子どもを引き渡すよう求めたものです。
裁判では、引き渡しの拒否が違法な拘束といえるかどうかが争われ、名古屋高等裁判所金沢支部が「本人が日本での暮らしを望んでいる」などとして訴えを退けたため、父親が上告していました。
15日の判決で最高裁判所第1小法廷の山口厚裁判長は「子どもが国境を越えて連れ去られた場合は、本人が必要な情報を得ているかどうかなどを慎重に検討する必要がある」という判断を示し、今回のケースは母親による拘束にあたると指摘しました。
そして、条約に基づく返還命令の拒否は、人身保護法の手続き上、原則として違法になるという初めての判断を示し、子どもを父親に引き渡すべきだとして、母親と子どもを出頭させるため、名古屋高裁金沢支部に審理を差し戻しました。
ハーグ条約に基づく返還命令を拒否するケースが相次ぐ中、罰則規定のある人身保護法による引き渡しを認めた今回の判決は、返還命令に実効性を持たせる判断として同様のケースに影響するものと見られます。
ハーグ条約の運用
ハーグ条約は、国際結婚が破綻し、一方の親が相手に無断で子どもを国外に連れ出した場合、原則として元の国に戻すための手続きなどを定めたものです。
外務省によりますと、ハーグ条約に基づいて外国にいる親が日本の裁判所に子どもを返すよう申し立て、返還命令が出たケースは、日本で条約が発効した平成26年から先月末までに23件ありました。返還命令を受けた親が引き渡しに抵抗した場合は、応じるまで制裁金を科すことができるほか、裁判所の執行官が出向いて子どもを返すよう求める「代替執行」を行うこともできます。
しかし、子どもの心身に負担をかけないように配慮する必要があるため、代替執行ができるのは親と一緒にいるときに限られているうえ、力づくで引き離すこともできません。外務省によりますと、これまでに日本の裁判所が代替執行を決定したケースは6件ありますが、いずれも引き渡しが実現していないということです。
こうした中、日本の法律に基づいて子どもを連れ戻そうと、今回のように「人身保護法」に基づいて引き渡しを求めるケースもあります。
人身保護法による手続きで裁判所が審理の必要があると認めれば、当事者は裁判所に出頭しなければならず、出頭しない場合は、強制的に出頭させたり、悪質な場合は刑罰を科したりすることもできます。そして、裁判所が保護の必要があると認めれば、その場で当事者どうしを引き離すこともできます。
外務省によりますと、ハーグ条約に基づいて代替執行が決まった6件のうち、人身保護法に基づく申し立てがあったケースは、今回も含め2件あるということです。
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