平成30年3月17日、産経新聞
ハーグ条約 子を守るルール周知せよ
離婚などで一方の親が子供を国境を越えて連れ去るトラブルが増えている。これに対処する「ハーグ条約」をめぐり最高裁は子の返還命令に応じないのは原則、違法とする初の判断を示した。
条約に加盟している以上、妥当といえる。子供を保護する条約の趣旨を改めて国民に周知、徹底することが求められよう。
条約は、16歳未満の子供を一方の親が無断で連れ去った場合、加盟国は子供を捜し、元の居住国に戻す義務を負うと定める。
今回の事案は日本人同士で、米国在住の父が、次男(13)を日本に連れ帰った母に引き渡しを求め、返還命令が確定した。母親がこれに応じず、父が改めて人身保護法による返還を申し立てた。
最高裁は、返還命令に従わないのは、特段の事情がない限り違法とした。子供をめぐる問題は、国際結婚のみならず、日本人同士の夫婦間でも起きている。
条約が日本で発効したのは4年前だ。今年2月末までに、子の返還命令が確定したものが23件あり、このうち6件は、連れ去った親が激しく抵抗するなどして返還に至らなかったという。
最高裁は今回、子供が意思決定に必要な情報を得ているか、連れ去った親が不当な心理的影響を及ぼしていないかなどを検討した。その上で、父と十分に意思疎通する機会がなく、「拘束」されていると厳しくみた。
夫婦の問題は、他人が立ち入れない難しさを抱える。だが、加盟した以上、ルールを破れば国際的に強く非難されることを親は知っておくべきだ。
欧米では両親の離婚後も自由に面会ができることが、子供のためになるという考えが強い。
親権制度などの違いもあり、条約が日本になじむかどうか、加盟には慎重論もあった。一方、日本から連れ去られた子の返還手続きを取れるようになるなど、加盟による利点があるのは明らかだ。
未加盟のままでは、子供を連れて日本に帰ろうとした場合に「誘拐」などと指弾され、渡航制限を受けるケースもある。
夫の暴力などから逃れ、子供を連れて帰国する女性もいる。条約では、子に危害が及ぶ場合は返還を拒否できる。政府は家庭内暴力の相談など支援態勢をより強化すべきだ。子供の幸せを最優先とする運用が大事である。
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