両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

平成30年6月26日、産経新聞

離婚夫婦、子供引き渡し迅速に ハーグ条約実施法改正へ 法制審部会が試案取りまとめ

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 海外での結婚生活が破綻するなどした親が日本に子供に連れ帰る事例が国際問題化する中、法制審(法相の諮問機関)の部会が、引き渡し(返還)が確定した子供を、連れ帰られた親に渡す実効性を高めるための試案をまとめる方針を固めたことが25日、分かった。連れ帰った親本人がいなくても、裁判所の執行官が子供を連れ出せるようにすることなどを盛り込み、今夏にも民事執行法・ハーグ条約実施法改正の要綱案をまとめる。
 現状では手続きの煩雑さのため、引き渡し確定後も子供がそのまま日本で暮らすことが多く、国際社会から制度の見直しが求められていた。
 ハーグ条約は国際的な子供の連れ帰りに関する国際条約で、日本は平成26年に締結。だが、実効性が不十分だとして、今年5月に公表された米国務省の年次報告書では、日本は「条約不履行国」に分類されている。
 法制審民事執行法部会は国内の連れ帰り事案を対象に、引き渡しの実効性を高めるために民事執行法の改正を検討。国境を越えた連れ帰り事案はハーグ条約実施法が適用されるが、問題点に類似性があることから、一括して要綱案を取りまとめる。
 一方の親が子供を日本に連れ帰った場合、現行制度では引き渡しまでに、(1)連れ帰られた親が引き渡しを申し立てる(2)引き渡し命令が確定する(3)連れ帰った親に、引き渡すまで制裁金を支払わせる「間接強制」を申し立てる(4)間接強制が確定する(5)相手が従わない場合、裁判所に引き渡しの「代替執行」を申し立てる(6)裁判所の執行官が(代替)執行する-という複雑な手続きが必要だ。
 間接強制の手続きが必要となるために時間がかかる上、代替執行の際には子供と連れ帰った親が一緒にいることが引き渡しの必須条件になっていることから、親が子供を隠すなどして抵抗した場合は執行ができなかった。
 法制審の改正試案では、間接強制の手続きを原則不要とする▽連れ帰った側の親と子供が一緒にいなくても代替執行できるようにする▽代替執行の際は原則、連れ帰られた親側を立ち会わせる-が柱で、一連の手続きに際しては子供の利益に配慮することを求めている。 
      ◇
 現状では、子供の引き渡しの代替執行が確定した例のうち、半数以上のケースでは引き渡されていない。こうした状況になった場合、現状では全く異なる裁判手続きが必要となるが、ハーグ条約実施法の改正により、手続きはスムーズに進むことになりそうだ。
ハーグ条約は、「16歳未満の子供を一方の親が無断で連れ帰った場合、加盟国は子供を捜し、元の居住国に戻す義務を負う」などと定めている。
 しかし、日本は条約にのっとっていないのが現状だ。外務省によると、ハーグ条約が発効した平成26年4月から今年6月までに、裁判で引き渡しの命令が確定したのは23件。このうち7件で代替執行が認められたが、7件のうち4件では引き渡しに至っていない。
 現行制度では、代替執行を申し立てる前に「間接強制」の手続きを取ることが必須で、引き渡しの足かせになっている。この手続きが前提なのは、「いきなり代替執行をすると、子供に負担を与える恐れがあるから」(法務省幹部)だが、裁判の終了までには相当の時間を要することもある。
 加えて、代替執行の際は子供と連れ帰った親が一緒にいることが条件で、一緒にいても親が抵抗すると「子供に悪影響を与える」などとして執行ができず、連れ帰った側の“抵抗得”になっている。
 抵抗などで代替執行がうまくいかない場合は、不当に拘束された人の釈放を求める「人身保護請求」という全く別の裁判を起こすことが一般的となっている。
 最高裁は今年3月、人身保護請求の上告審判決で、「確定した引き渡しの命令に従わないのは原則違法」との判断を示した。引き渡しを求める側にとっては追い風とみられるが、国外にいる親が、日本で新たな裁判を起こす負担は依然として大きい。
 一方、連れ帰った親にしてみれば、「子供のため」という思いが強い。最高裁判決の事案でも、連れ帰った母親は「子供の意思で日本にいる」「無理に連れ帰ろうとしているのはむしろ父親だ」と主張していた。
 夫婦間には他人が立ち入れない難しさがある。手続きの迅速化だけでなく、引き渡しには子供の利益への配慮が求められる。(半田泰)

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